arc の日記

はてなダイアリーから引っ越してきました。さらに新しい記事は https://junkato.jp/ja/blog/ で書いています。

東京大学 学生による事業仕分けに関するアンケート・署名活動

行政刷新会議事業仕分けで、学術振興会の予算を削減する結論が出されました。仕分けの結果通り施策が実行されると、人文・社会・自然科学の全ての分野で、博士課程の学生やポスドクへの補助金が削減されてしまいます。
東大生の有志で、若手研究者育成の問題に的を絞って、反対の署名を集めています。12/7に東大理学部広報に提出するので、間に合うように協力者に渡してください。
この活動について、詳しくはhttp://wakate.digitalmuseum.jp/をご覧ください。意見・質問・協力などの連絡はsiwakeannke@gmail.comまでどうぞ。よろしくお願い致します。

東京大学 学生による事業仕分けに関するアンケート・署名活動

というわけで、僕の通っている大学の学部生が中心となって、事業仕分けの結果に異議を唱える活動をしています。僕も、このリンク先のWebサイトを作ってお手伝いしています。同じ大学・大学院の人は、ぜひ彼らの主張を読んで、活動に参加するかどうか考えてみてください。
活動期限は来週頭なのでけっこう切羽詰まってます。急ぎの用件なら、彼らのメールアドレスか、僕に直接連絡をくれても対応できるかもしれません。(連絡先は一本化したほうがいいんだろうけど、彼らに直接送りにくい人がもしいたら、僕にどうぞ。)
事業仕分けは、今更その進め方自体に議論が巻き起こっていますが、とにかく終わってしまったことです。そして、様々な人に影響がある結論が出ています。当事者としてできることは、意見を表明すること、各所に陳情することでしょう。
ここでは、僕の立場から科学技術予算、とくに若手研究支援に限った話をします。

学術振興会の特別研究員制度

現在、多くの大学の研究室では修士あるいは博士課程の学生が、実働部隊として研究に携わっています。また、博士課程修了者(ポスドク)は、研究そのものに加え、研究室・研究チームの運営において大きな役割を果たしています。大学の学部を修了した人たちの多くが社会人として働いて給料を得ている一方、これらの学生とポスドクは基本的に研究が忙しく、自活が難しい環境に置かれています。
そこで、文部科学省系の外郭団体である学術振興会が、優秀な博士課程の学生及びポスドクを特別研究員として採用しています。特別研究員には、生活費に充てられる研究奨励費(博士課程の場合、月20万円)と研究費(博士課程の場合、年100万円まで)が与えられます。その代わり特別研究員たちは、研究計画書や報告書の提出を義務付けられるだけでなく、他の場所でのアルバイトなどを禁止され、研究に専念することになります。
今回の事業仕分けでは、このための予算を削減すべきという結論*1が出されました。

減額の結論が出た経緯

仕分けの議論の書き起こしテキストを読むと、ポスドクが余っているから政策的に博士進学者を減らしていく必要がある、そのためにも予算を削減したらいいのではないか、という話の流れが見えてきます。

反論

特別研究員PD(ポスドク)の採用者数は2008年まで既に大幅な減少傾向にあり、これ以上採用者数を減らされると研究が進まなくなるから困る、という要望*2が出されています。そもそも、特別研究員の採択率は博士課程の学生向けのDC1、DC2で3割程度、PDでは1割程度で、仕分けの議論で一部の人が言っていたような生活保護とは趣を異にします。
また、進路を悩んでいる修士課程、学部の学生にとっては、将来に不安があればあるだけ、研究への道を考えづらくなります。実際、研究の第一線で活躍して成果を出している先生方でも、進路を決めるときから自分の選択に自信を持てた人は少ないのではないでしょうか。
さらに、今回の仕分けの結論では、特別研究員に関する予算を丸ごと1/2-1/3削減するという意見が大半を占めるため、特別研究員PDだけでなく、DC1、DC2にも影響が出ると考えるのが自然です。今回の件で学部3年から博士までの学生全体に不安が広がっており、予算が確定されると数年に渡る人材の空白が懸念されます。
そこで、まずは減額という結論に対する当事者の態度を明確にするため、学生が立ち上がって冒頭で紹介した活動をしているわけです。極めて限られた範囲の人間たちによる活動ですが、それゆえに、事業仕分けに対する反論の論点が明確になっています。
公式サイトでは、主張に賛同できる人向けに、どなたにでもできる活動の例も紹介されています。

「仕分け」自体に対する個人的意見

個人的には、今回の件がきっかけで政府におんぶにだっこで今まで表に出てこなかった利権団体が浮上してくれたら、今よりはもう少し意義が明確な政治ができるようになるのではないかと思っています。
民主党政権になる前後で「無駄を省く」という表現がよく聞かれましたが、この言葉が曲者で、100%の悪が存在しないように、100%の無駄なんてありません。つまり、悪者を見つけだして叩く勧善懲悪ではなく、様々な主張がひしめくなかで、日本という国(したがって、その構成要素たる国民)のためになるものに優先順位をつけていき、なるべく全体の不満が少なくなるよう調停することこそが求められています。
つまり、仕分け作業自体は、(あんまり芝居がかっていてひどいとは思いますが、)やらないほうがいいとは考えていません。そして、「理系宰相」のリーダーシップには大いに期待しています。

蛇足

昨日散髪しに行ったとき、美容師さんとこの件で雑談しました。美容師は月に13万の給与から始まったりするんだよー、でも、研究現場の学生はそれはそれで大変なんだねぇ、金額とか聞くと身にしみるよねぇ、というような話をしました。けっきょく、特別研究員は月額を多少減らしてもいいから今以上に人数減らされたら嫌だよねぇ、日本やばいよねぇ、という結論に達して話が終わりました。