特許法のさわりの部分だけ
知的所有権と著作権という講義を取っていて、提出すべきレポート課題と違うところを文章にまとめてしまってむしゃくしゃしたので、その部分を転載します。特許法の全文は政府のWebサイトで読めますが、解説がないとその背景や意義は全然分かりませんね。いやはや面白いです。
ちなみに、これを読んでる人の中に専門家がいる気がするので、間違ってたら教えてください:)
特許法の目的
発明は情報であり、情報は非排他性を持っています。すなわち、コピーするのが容易で、いったんコピーされれば同時に複数人によって使用できます。したがって、発明者以外の他人にとっては、発明を知ることができた時点で(発明の活用法に関する技術的ノウハウは別にして)発明者と同等の立場に立てたことになり、発明の優位性が失われます。発明者は時間とお金、人手を使って試行錯誤を重ねた結果として発明に至るものですから、単にこの情報を他人に明け渡すだけでは報われません。一方、発明は利用されてこそ社会的な価値を持てるものです。発明者の利益が確保されることと同時に、発明が秘密にされることなく適正に利用されることが望ましいでしょう。
特許法は、このように、発明者の権利を保護して新たな創作へのインセンティブが損なわれないようにすること、また、発明の第三者による利用を認めて産業の発展を促進することを目指しています。(特許法第一条)
特許法が対象とする発明の定義とその分類
特許法が対象にする発明は、
- 自然法則を利用した
- 技術的思想の
- 創作のうち
- 高度なもの
を指します。(同第二条)
例えば(1)に当たらないのは自然法則それ自体や自然法則と矛盾する永久機関など、また、自然法則を利用しない人為的取り決めです。(2)は一定の目的を達成するための客観的な手段であることを意味しており、個々人の技能や情報の単なる提示は該当しません。(3)は発明者が新しいものを創り出していることを指し、自然現象を発見することは当たりません。ただし、自然現象を手段として利用して特定の目的を達成できた場合は、そのプロセスの考案が創作として扱われます。(4)は実用新案との区別を示すための要件です。実用新案法第二条は実用新案の定義を示しており、特許法第二条による特許の定義と似ていますが「高度な」という文言がありません。ただ、実際に特許庁によって高度か否かの判断が行われることはありません。発明者は、特許法と実用新案法が規定する特許と実用新案の相違を踏まえて、自らの発明をどちらとして出願するか選択することになります。
発明は物の発明と方法の発明に大別されます。(同第二条三項)それぞれ社会に流通させる方法が異なるため、権力の効力の及ぶ範囲が別個に規定されています。物の発明の場合はその物を生産、使用したり、販売したりする行為が対象になり、方法の発明の場合は、その方法を使用する行為のほか、もしその方法によって物が生産される場合は、生産物に関する物の発明相当の行為が対象になります。
なお、実用新案と特許の相違の概略は以下の通りです。まず、実用新案は物の発明のみを扱い、方法の発明を対象としません。次に、権利の存続期間が10年であり、審査がありません。一方、特許は権利の存続期間が20年で、審査によって新規性や進歩性の要件を備えていることが判断され、保証されます。したがって実用新案は出願にかかる費用が比較的安価となり、また、権利を行使するためには別途評価書を請求して特許庁の判断を仰ぐ必要があります。