arc の日記

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MIT原子力理工学部による18、19日夜時点での状況解説

本記事は6つ目の翻訳記事で、元記事は2つあり、それぞれ日本時間18日午後7時19分と20日午前3時36分に公開されたものです。前5つと同様にGoogle Docs上[1][2]で作業が行われました。下訳を作成された @masae_i さんと @yoshi_mit さん、校正してくださった @LunarModule7 さん、ありがとうございます。

注意: この記事は福島第一原発の最新の状態を解説したものではありません。福島第一原発事故関連で日本語の良質な記事・ニュースソースをご覧ください。また、この記事のほかにも様々な記事が翻訳済みです。翻訳記事の一覧はMIT原子力理工学部による原子力発電の解説(翻訳)にあります。

目次

18日夜時点での状況解説

3号機と4号機の使用済み核燃料プールへ、依然として放水作業が続いています。上空からの視察では4号機のプールには水が見られたので、3号機のプールを冷却するよう、ひとまず焦点が当てられています。ヘリコプターを使い、上空からプールに水を落下させる試みは、大部分では成功とはいえませんでした。しかし一方で、航空機の消火に使われる、自衛隊の消防車による放水活動は、ある程度成功しています。緊急消防援助隊東京消防庁ハイパーレスキュー隊が現場に到着して、およそ2時間、任務を指揮しており、その間、7〜8分間放水し、蒸気が消えるのを待ち、再び放水を繰り返す作業をしています。

東京電力は外部電源を復旧させるため、施設から1.5kmのケーブルをひいています。これによって1号機と2号機における、原子炉の緊急冷却装置に電源が供給されるものと思われます。

5号機と6号機の使用済み核燃料プールを冷却するため、非常用ディーゼル発電機が接続されました。日本時間午後4時、これらのプールの温度は65.5℃と62℃にまで上昇しています。

両原子炉にある使用済み核燃料の中央プールでは、上空からの視察が行われています。中央プールには、施設で使われた燃料のうちの60%と、乾式キャスク貯蔵区域があります。中央プールの水位は「安全である」とされ、乾式キャスク貯蔵区域では「異常事態」を示す兆候は全く見られなかったということです。今後、これらの区画について、より詳細に検査することが予定されています。

日本政府は全国のモニタリングポストにおける、放射線測定値の結果を公表しました。データはこちらからご覧になれます。(訳注:最新情報は文部科学省の公式サイトからどうぞ。また、有志の方々の手で非公式・放射性物質モニタリングポストMAPというものが作成され、公開されています。)

これらの測定値は自然放射線を超過した分の放射線値を示しているため、場所によっては低い数値が出ている場所もあります。モニタリングポスト32番における高い測定値は、格納容器の弁を操作した結果と、同時に生じた火災が、放射性物質を内陸に運んだことによると考えられます。事故が起きてから今までの気象条件は、おおむね放射性粒子を海の方に掃き出すような傾向にありました。

これらの放射線測定値と現在進行している事態をふまえた結果として、経済産業省原子力安全・保安院は、国際的な評価基準のINES(訳注:国際原子力事象評価尺度)に基づいて、深刻さを表す評価を「レベル5」に引き上げました。これはスリーマイル島原発での事故と同じレベルで、チェルノブイリでの事故と比べて2段階低いレベルです。

情報源: ANS Nuclear Café、World Nuclear News、IAEA文部科学省

注: 以前、当サイト(翻訳元、MITのサイト)で六号機の使用済み核燃料プールの温度は摂氏84度だと報告しました。これは誤植でした。申し訳ございません。

19日夜時点での状況解説

枝野幸男官房長官は3月19日の記者会見で、福島第一原子力発電所の原子炉1、2、3号機への海水注入が続いていると述べました。

4号機の使用済み燃料プールへの散水作業の準備が進められ、原子炉3号機の使用済み燃料プールには無人屈折放水塔車が7時間に渡り1500ガロン以上を散水した、と枝野長官は述べました。さらに、3号機の燃料プールの状況は安定に向かっているとの考えを示しました。

さらに、5号機と6号機では、発電機の設置により原子炉の冷却能力が一部回復したと、付け加えました。

枝野長官は、福島第一原子力発電所の外部電力を回復する抜本的な解決が進展しており、1、2号機は本日、3号機は日曜には電力が回復する見込みだ、と述べました。

枝野長官は、追加設備が現地に輸送中であり、プールに冷却水を送る他の手段も検討中であると述べました。

福島第一の西門における放射線量は、3月18日午後7時10分(EDT─訳注:日本時間19日午前8時10分)時点で一時間あたり83ミリシーベルトだったが午後8時(EDT─訳注:日本時間19日午前9時)時点で1時間あたり36ミリシーベルトへ下がったと、枝野長官は述べました。放射能レベルは3月16日から減少しています。原子炉付近の放射能レベルは、通常より高いものの、作業員が現地で復旧作業を継続できる範囲だと、IAEAは述べました。

IAEAによると、東京と30kmゾーンの外における放射線量は、政府による保護措置が必要になるレベルよりもずっと低いままということです。

福島第一原子力発電所の全ての原子炉は、冷温停止しています。(日本原子力産業協会のWebサイト参照)

福島県と近隣地域からの一部の食品では、国の基準を越える放射線レベルが確認されました。日本原子力産業協会によると、このレベルの放射線は、福島県の牛乳の複数のサンプル、隣接する茨城県のホウレンソウの6つのサンプルから検出されました。もしこれらの食品を1年中食べ続けた場合、放射線の総量は1回のCTスキャンに相当すると、枝野長官は述べました。

これらの地域では、食品の監視強化が続いています。