雨の修善寺 一人旅(初日)
久しぶりにのびのびと一泊二日の一人旅に行ってきました。前日の夜急に思い立って行ったので宿は温泉場から遠く、天気も悪かったんですが、その代わり人に恵まれ、いい写真も撮れたのでよしとしましょう。無目的な旅は全部が全部思いがけないのでわくわくするのです。
旅行のあいだ、ときどきTwitterにつぶやいていたので、その履歴と一緒にふりかえってみようと思います。…写真もあるのでずいぶん長くなってしまったよ。
3月24日
午前中は沼津で用事がありました。このことは後日機会があればまとめようと思います。
- 八時半に東京発なんだけど六時に起きて大学寄って七時半より前に着いちゃった。 posted at 07:34:31
- PRONTO IL BARで軽い朝ご飯。音楽プレイヤーのピンについてるバネが飛んでどっかいったので若干ふしあわせな気持ち。 posted at 07:51:16
- こだま名古屋行き5号車自由席がら空きなう。電車来るの早いと思ったら、ここ始発なんだよな。東京便利! posted at 08:10:52
修善寺駅からバスで修善寺温泉駅へ。10分ちょっとです。
バス停を降りて温泉街を進むと、まず日枝神社に着きます。
猫が雨宿りしていました。面構えがよくて、どことなく源氏っぽい。いや、とくに根拠はないです。
日枝神社には、向かって左側に子宝の杉、右側にイチイカシという大木が生えています。
子宝の杉は、間を通ると安産になるとか言われているそうです。僕も間を通りましたが、意味ないですね。はい。続いて修禅寺に行きました。
観光案内があったんですが、垣根に阻まれて近寄れず、細かい字がとても読めない。BAD UIにもほどがある…。
書院では保坂紀夫『竹』展というのが開かれており、雨だったのでかえって綺麗な光の芸術を見ることができました。写真は撮っちゃダメと言われたのでありません。気になる人はリンク先を見てみてください。書院からは庭園を見ることもできました。写真左下、蛙の置き物が雨に似合っている。
参拝してから本堂の両脇を見ると、タンクのようなものが。
「天水長不涸」「一雨潤千山」と書いてあります。雨どいを通して雨水が集まる構造になっていますが、何に使っているのかは知りません。何だろう?
境内には、修禅寺寒桜という、普通より開花の早い種類の桜が生えていました。ほとんど咲き終わっちゃって、残っている花にも元気がなかったです。
それに引き替え、竹はいつでも元気。
一人だけカメラ目線のやつがいる!
このあたりで、宿に行くことを考え始めました。とりあえず桂川をはさんでお寺の反対側にある一石庵というお茶屋さんに入って、昆布茶を頂きます。
店主と思しきお兄さんというかおじさんに泊まる場所を聞かれ、答えると「それは遠いよ…」との反応。歩くと30分以上かかる様子。
- 宿が遠いのは本当だったらしい。観光地図にないッ!茶屋の若旦那に笑われてしまった。「いいよ送っていくよ。ゆっくりしていきな。」惚れてまう。 posted at 16:20:03
何と、お店をしめてから送っていただけることに。オフシーズン、雨、男の一人旅、どれが欠けてもこんなことにはならなかったかも?とくに、一人旅って周りが話しかけやすいのか、いろんな出会いがありますね。
若旦那からは、修善寺が観光地として有名になる経緯など、興味深い話を聞けました。例えば…
- 修禅寺は弘法大師(空海)が開いたと言われていて、最初真言宗だったのが臨済宗、曹洞宗に二度も改宗していること。
- 途中、延焼などがあって、再建に際しては弘法大師のネームバリューでが大いに役立ったらしいこと。そんなわけで、修禅寺が地元の人には「弘法さん」と呼ばれていること。
- 明治の半ば、岡本綺堂という劇作家が修禅寺物語という戯曲を書いたのが大ヒットして、そのあと観光客が急に増えたこと。
- 昭和のはじめに一大観光地化プロジェクトがあって、散歩道や、源義経像、新井旅館のような歴史的な建築物はそのとき作られたこと。
等々。
修禅寺物語は、僕は手塚治虫の七色いんこ (1) (秋田文庫―The best story by Osamu Tezuka)の中で読んで何となく知ってました。そう、話の筋から逸れるから詳しくは語らないけど、七色いんこ面白いよ!超おすすめだよ!!全話が何らかの戯曲をベースにしたストーリー展開になっていて、言わば手塚治虫による古典の二次創作。主人公は代役の天才、変装の名人で、盗みを働く一癖あるイケメン。ヒロインはポニーテールで金髪…と聞いてツボにはまっちゃうそこのキミ、必読。鳥を見ると小っちゃくなっちゃう体質で、キャラ付けも完璧。個人的には手塚治虫作品の中で一番好きです。
さて、せっかくいろいろと教えてもらったので、もっと知りたいと思って次の日お寺で旧字体のすごく古い本「修禅寺夜話」を買ったんですが、これも昭和のはじめに初版発刊となっていました。その頃に今ある姿の修善寺地域が整備されたのは間違いなさそうです。入手した本自体は昭和五十五年発行の改訂四版で、それでも僕より年食ってます。感慨深い。内容としては、当時の住職であるところの深谷博道師が修禅寺にまつわるあれこれを語り口調で解説するというもので、言い回しは古いけれどもたいへん分かりやすい。これをまとめ直せばいっぱしの歴史資料になると思います。
本を読んだら、いくつか気になっていた疑問も解消しました。例えば、「しゅぜんじ」というと表記が修善寺と修禅寺の二通りありますよね。これは、元々お寺そのものを指していた修禅寺という名前が途中で地域全体を指すようになって、それでは修禅寺と書いたとき寺単体と地域のどちらを指すのか紛らわしいというので、地域に対して修善寺という漢字を新しく当てたらしい。思い返してみれば、確かに電車やバスの駅は修善寺とか修善寺温泉で、寺だけ修禅寺という書き方で一貫していました。なお、元々修善寺という表記だったものが臨済宗に改宗したとき禅寺になったから修禅寺になったという説もあるが、これは嘘(道師談)、とのこと。
- 若旦那に車で送ってもらって、宿に着いた。歩けない距離ではないが、雨に弱い人だと心が折れそうな道のりだった。ありがたい。 posted at 17:40:04
- ベッドが二つある洋室なので旅館という気がしない。和室のほうがよかった(高いんだけど)。 posted at 18:03:03
- 夕飯がないプランなので、コンビニ弁当を持ち込み。フロントでお姉さんにチンしてもらった。「これ、あそこで買ったんですか?あの、バス停近くのコンビニ。へー、美味しそうっすね。」そう言われるとなんかうまそうな気がしてくる。へへへ、そうですか、と返事。部屋に戻り弁当を食す。 posted at 18:35:23
- 日替わり(水)チキンカツ弁当美味しいです。 posted at 18:36:26
- そういえばお姉さんたち以外に宿で人を見ていないんだけど…宿泊客僕だけとかそういうあれですか?なに? posted at 18:39:42
- それにしても、修善寺は、泉鏡花とか川端康成とか夏目漱石とか島崎藤村とか井伏鱒二とか芥川龍之介とか尾崎紅葉とか…そうそうたる文豪たちに愛された温泉地ですね。別の季節にまた来たい、というか隠居にいいのだろうなぁ。 posted at 18:56:39
- 温泉も水風呂もサウナも露天風呂も貸し切りでした。雨に打たれながらの露天風呂は…新鮮だった。 posted at 20:31:33
ちなみに宿はサンシャイン修善寺と言います。旅館というくくりで探したんだけど、旅館らしからぬネーミングよなぁ。内装もホテルっぽかったし。中の人たちはとても親切でよかったです。
風呂にゆっくり浸かって部屋に戻ったらすぐに寝てしまいました。
二日目に続く。